文化財の所有権についてー模写を禁止できるのか?

はじめに

メールに流れて来て、つい見てしまったため突っ込んでおきます。予め断っておきますが、今回は特定のTweetを引用して批判しています。個人批判ではなく、明らかに法令の解釈として問題があるための批判であることをご理解ください。気に入らなければ、この先を読まないでいただきたいし、フォローを外すなりブロックなりご自由にお願いします。どのみち私はTwitterには、おりません。自動的にTwitterにブログの更新情報が流れるのみであります。

あと高山寺が所有権者として、模写禁止を条件にした前提で書いていますが、事実は知りません。以下のTweetが、その前提での禁止に妥当性が有るのかを条例を元にして論じているため、その前提で私も論じます。

その法令解釈あってます?

問題のTweetは、こちらです。2つ引用するよりRTを引用したほうが簡単なので、そのようにさせていただいています。

「所蔵者の意向ガー」という子供じみた言様もちょっとどうかと思いますが、所蔵者すなわち所有権を有する人の権利を、条例を理由として制限することが妥当であるかどうについて、検討したいと思います。正直、検討するまでもないのですけどね。

文化財保護法の規定

所有者が有する所有権は、民法に規定されています。ですが、鳥獣人物戯画は、言うまでもなく国宝であり文化財保護法が適用されます。特別法は、一般法(ここでは民法)に優先するという原則に従い、文化財保護法において所有権の行使がどのように規定されているかを最優先として確認するべきでしょう。

文化財保護法

最初に所有権に関する記載が現れるのは、第一章総則 第四条 三項です。

政府及び地方公共団体は、この法律の執行に当つて関係者の所有権その他の財産権を尊重しなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0100000214

いたってシンプルです。所有権を含む権利は、尊重されなければならないのです。目を皿のようにして読みましたが、なんらかの理由で文化財の所有者の所有権行使を制限することができる法的根拠は見つかりませんでした。例外は、処分(廃棄)に関するものくらいでしょう。一貫して関係者の所有権を尊重すべきという内容だけです。それでも権利行使に対する制限をかけることができると主張するならば、明確な法的根拠が必要でしょう。条例?それは、後で論じます。

それとも文化財保護法よりも優先されるべき法律があるとでも、主張されるおつもりでしょうか?これ以上の特別法は、ある気がしませんが。。。

民法は?

文化財保護法では、所有権を尊重しろと記載されているのみで、所有権の具体的な内容についての記載は有りません。この場合、所有権の具体的内容は、民法の規定が適用されることになります。民法において所有権は、以下の通りに規定されています。

第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

法令の制限内においてですが、自由な使用が認められているということは、明確な事実です。もし文化財の貸借契約(自由な使用もしくは収益)において付帯条件をつけることが、何らかの法令違反になるのだとすれば、法令を示して説明してもらわなければならないでしょう。

美術館条例は優先されるのか?

件のTweetでは、美術館条例が引き合いに出され、あたかもこの条例が最優先されるべきであるかのように書かれている。今回の場合、法律の記載と条例の記載が矛盾しているかについては、微妙な解釈だと考えます。どっちが優先されるかは、事例によって異なり裁判でもしなければ判断はできません。しかしながら当該の条例は、福岡市のものである、福岡市においてのみ効力を有するものです。じゃあ、福岡市に行かなければ、オッケーじゃない?ってことです。

正直なところ条例の記載内容を精読していませんが、しないのは単に読む必要が無いからです。もし所有権者が、意に沿わない「模写可能」の条件を条例を根拠として要求された場合、何が起こるのでしょうか?言わずもがなですが、単に貸し出しを行わないだけのことです。当たり前ですが、その条例が最優先されるべき性質のものであったとしても、京都をでなければ住むだけの話です。高山寺は、出さないという選択をすることが可能です。

条例を理由にして模写を許可すべきだとするのは、かなりの無理筋だし、そんな事をして被害を被るのは誰なんだという話です。来てもらえなければ、モシャモシャ言うことすら叶いません。それは、一体誰の利益になるのでしょうか?

そもそもの話

法律解釈以前の話として、博物館に限らず、町中のあちこちで所有権者の意向により、一般利用者の文化財利用に制限をかけている例は、いくらでも見られます。寺社などで入場料をとったり写真撮影を禁止したりするのは、その際たる例です。仮にこれらの行為が、法律的に問題なのであれば、なぜ放置されているのでしょうか?

単純に文化財保護法と民法により、使用することも収益することも認められているから、どうどうとその権利が行使されているだけなのです。

まとめ

まあそういうわけで、条例を理由としてミュージアムでの模写の是非を云々するのは、でたらめであるということです。高山寺が、模写禁止を条件としたとしても、それは所有権を認められる範囲で行使したに過ぎません。もしこの説明に意があるあるというのであれば、きちんと法的根拠を元に、ぜひとも説明していただきたいものです。

まあ、こんなしがないブログを、お忙しい方々が、わざわざ読みに来るとは、思いませんが。

追記

今回、引用した2名の方に特段のマイナス感情を抱いているわけではありませんので、その点は重ねて強調しておきます。お一人には、実際にお会いし、石器についていろいろと質問させて頂いたことがありますし、普段の活動も応援しているのですがね。ただただ、まいどまいど戦略的に間違っていると思うだけです。うまくやらねば、風穴なんか開かないのですよ。

追記の追記

念のため言っておきますが、我々利用者が節度ある利用をすることによって、模写やら写真撮影が許可される世の中になってほしいなと私は思っていますからね。別に模写禁止のままで良くない?ってことではありません。でも、このままじゃ撮り鉄化するのも時間の問題じゃないですかね?

ただ単に、「竹槍もって集まって、エイエイオーってやっても悪影響しか無いのですよ」ということが、言いたいだけです。あとまじでTwitter見てないので、Twitter上での反応は知りません。どうしてもこのやろーって言いたい方は、DMとかブログのコンタクトから連絡すると良いですよ。メールはチャックするかもしれませんので。

追記アゲイン

だったら最初から法令の話するんじゃないよ。そんなリアクションが必要なケースを想定して、前もって書いておきます。

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