お腹をいたわる土偶
茅野市からの出土品ということですが、残念ながらどの遺跡からの発掘品かは不明でした。非常にシンプルな表現で紋様は肩の部分にあるのみです。胸の表現と腰の大きさは、この土偶が明らかに女性をモデルにしていることを示しています。
シンプルな表現の中でも目を引くのは、いたわるようにお腹に添えられた両手の表現です。不自然な大きさに誇張された表現です。やはり妊娠出産のお守りとして作られたと考えるのが自然なのでしょう。
時代
縄文時代中期(約5000〜4000年前)
発掘遺跡
不明(長野県茅野市)
展示されている博物館
尖石縄文考古館に展示されています。
コメント
胸、お腹、おへそといった妊娠、出産、育児に関連する部分を特徴的に表現した土偶が、数多く存在しています。それにたいして手足などの末端部分は、省略されたりいい加減な造形だったりします。中部高地の土偶も縄文のビーナスのように手が極端に省略されているものが、数多く存在しています。
それに対してこの土偶は、手がはっきりと表現されています。しっかりと表現されてはいるのですが、右手の指が5本なのに左手は4本しか有りません。これが意図的なものなのかどうかはわかりませんが、手そのものではなく手が守っているもの自体が表現の主体だったのではないでしょうか?